在宅介護の鮮烈なデビューのあと、しばらく放心していた。
だが午後には、介護担当者が一斉に集まり、
ケアマネジャーを中心に親の状態を見て、
今後の予定変更などを話し合う会議が開かれることになっていた。

何しろ、大幅な変更だ。外出どころか歩行すら難しくなったため、
介護用具の確認や搬入、交換に来てくれた方々には、
手すりや歩行器などの撤去をお願いした。
しばらくは車椅子での移動になるので、
家から外へ出るためのスロープを段取りしてもらう。

デイケアでの入浴(車椅子に座ったままでできる機械浴)や
リハビリを予定していたが、
通所は今の状態では無理と判断され、
別の方法に切り替わった。
訪問看護の方が毎日健康状態をチェックしてくれることになり、
その点は大きな安心だった。

さらに訪問診療チームも来て、
本人の診察と家族への今後のケアについての指導が行われた。
医師は父と握手をしながらこう言った。
「はじめましてですけどね、あなたのカルテは全部読んできました。
だから私は初めて会った気がしないんですよ」

その言葉に、目頭が熱くなった。
(親たちは、言葉の意味がわかっておらず、ポカンとしていた)
今でも思い出すと泣けてくる。
その時の安堵を、きっと忘れないだろう。

医師は詳細に経過を読み込んでいて、
今の状態をわかりやすく説明してくれた。
今後どうしていくのがいいかも丁寧に示してくれたおかげで、
私たちはようやく落ち着きを取り戻し、今後の改善に希望を持てた。

話の中で知ったのだが、先生は薬の開発にも関わり、手術の経験も多く
一通りの医療現場を経験した後、
自分の能力を困っている人のために使いたいという思い、
この大変な仕事である訪問診療を選んだのかなあと思った。

自分の能力を人のために役立てる仕事。
集まった担当者たちはそれぞれの専門分野で見事に役割を果たしていて、
まさにプロフェッショナルで痛快で、
どんな生き方をするかという問いに、
彼らは明確な考えを持っているように見えた。

午前中の絶望から一転、
今後の考え方に影響を与えるような人たちと出会えただけでも
心底よかったと思えたし、神々を見たような気持ち。

十月、神々が集まり話し合う神在月。そのあと、
我が家に立ち寄ってくれたのかと思えたほど。